『小説久坂玄瑞 花冠の志士』 古川薫 文春文庫 660円+税
政府発表の新型コロナ蔓延緊急事態宣言がさらに今月いっぱい続くという。穂高に住む友からコゴミなどの山菜が届いたと電話をくれた読書好きのご近所の奥さん、段ボール箱を整理していて出てきたからと数冊の文庫本も貸してくれた。思う存分晴耕雨読ができる。はまってしまうと晴読雨読だ。ホホホッ。
その中の一冊がこれ。
幕末期の尊王攘夷論を展開する長州藩の若き獅子たちの話しである。松下村塾を主宰する吉田松陰の妹を妻に迎えた久坂玄瑞の、リーダーの一人として25年の短い命を激動の日本の渦に捧げた話しである。盟友の高杉晋作、伊藤利助(博文)、桂小五郎(木戸孝允)、山県小輔(有朋)などと共に討幕し長州を表に出すために暗躍し戦った。攘夷の実践として品川御殿山に幕府が建設中のイギリス大使館を焼き払ったり、下関で黒船を砲撃したりした。
この件を、黒船側からはイギリス人通史のアーネスト・サトウが『一外交官のみた明治維新』で記録している。
朝廷策が失敗し長州藩士らは会津藩士、薩摩藩士に砲撃された蛤御門で玄瑞は壮絶な自害を遂げる。
片や生き延び、明治政府の要人として新しい日本を担っていく若者、片や無謀し知りつつ何かの力に押されて圧死して行く若者。壮絶な運命の分かれ目であったのだ。
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