『ブラームスはお好き』

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読書日記

2012年06月29日

『ブラームスはお好き』 フランソワーズ・サガン 新潮文庫 438円+税 

遠い昔、45年前頃の学生時代、休講になるとやはり洋画好きの学友たちと新宿だか飯田橋だかにあった映画館に行って切なくも夢の世界に浸っていたものだった。
「さよならをもう一度」という、当時のうら若き私にはまだ全く理解出来ない映画を見た。アンソニー・パーキンスが素敵だったのは今でもおぼろげに覚えている。
この映画を過日テレビでやっていた。懐かしく思い見てみたら、『ブームスはお好き』を映画化したものだと判明。そう、サガンは『悲しみよこんにちは』も、60年代のパリ中産階級の不条理をテーマに、たしか若干19歳で著わしたのだから凄い作家であったのだろうが、同じく19歳や20歳だが貧しく現実的な学生生活を送っていた私には、どんなに背伸びしても理解不能だったな。今なら、この倦怠感が分かる気がする。
そこで、早速アマゾンで購入読んでみた。
なるほど、フランス人のエスプリの利いた大人の静かな一時を感じた。

パリにアトリエを構える39歳の中年女性実業家ポール(まだまだ女性は結婚するか修道院に入るかしかない時代、ましてや職を手にした実業家はまれな時代)と、彼女より少し年上の運送業者の渋い男性ロジェ、そして大金持ちの息子で25歳、美男の弁護士見習いシモン。この三人の愛の三角関係が、人生の自由と歳の差について、淡々と綴られている。
…… かれは、くしゃくしゃになった顔をポールに向ける前に、ちょっとよろめいた。またもや、ポールは腕の中でかれを抱きとめていた。かれの幸福を抱きとめたように、かれの不幸を抱きとめていた。そして、彼女は、はげしい、が、美しくさえあるこの悲しみを羨まずにはいられなかった。彼女には再びくることのない美しい苦しみを。……

 

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