『鑑賞 佐藤佐太郎の花の歌』

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読書日記

2011年02月18日

『鑑賞 佐藤佐太郎の花の歌』 戸田佳子 角川書店 2857円+税

著者はわたしの高校時代の友人である。
数学教師を辞めて、親の介護をし、その後大学に入り直して好きな短歌の道を歩いている。

本著では、大学院で研究した現代歌人佐藤佐太郎の純粋短歌の中から、「花」を歌ったものを選んで鑑賞している。
取り上げた花の種類は桜、蓮、葵、菖蒲などなど44種。それぞれに、日本国語大辞典から引用し、その花を先ず説明している。
そして、佐太郎の歌だけでなく、万葉歌人など他の人のその花にまつわる歌もさらりと紹介している。
大作だ。

彼女の鑑賞も丁寧である。
例えば今を盛りの梅の歌では、
 
 かの朝の窓ひとときに明るかりし梅の群花(むらばな)いまだ忘れず 
                                       (『立房』昭和21年「春来」) 

「…"かの朝の窓ひとときに明るかりし"と表現したのもそれまで誰も言ってない表現ではないか。美しいことをただ美しいといったのでは伝わらない…情景が眼前に迫ってくる。…戦争が終わって初めて迎える春である。梅の花に限らず様々のことに期待を抱いていたであろう」

見事な鑑賞の数々である。
そして、著者のしっかりとした国語に読み応えを覚えた。
恩師の推薦で大学で短歌の講師を務めているだけのことはある。

著者は既に2冊、『いなづま』(短歌新聞社、平成15年)と『九段坂』という歌集を出している。
次の自身の歌集も大いに待たれる次第だ。

 

<著者からのメール>
  早速に拙著『鑑賞 佐藤佐太郎の花の歌』をご紹介下さりありがとうございまし
た。大変ご丁寧な暖かいご紹介で有り難く存じました。感謝申し上げます。
 短歌という文学でもやや特殊(と思われがち)な分野の本ですので馴染みにくいとこ
ろもあったのではと思いましたが、筆者の意を汲み深くお読み下さったことうれしく
思いました。これに懲りずに短歌に今後目を向けていただければ有り難いです。
 せっかくご紹介下さったので1つ訂正したいのですが、歌集はこれまでに3冊刊行してい
ます。昭和60年1月に『寒雷』という歌集を出版しています。すみませんが差し上げ
てないのかも知れません。今度お会いするとき謹呈させていただきます。

 

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