『本物のおとな論』

トップ > 日記

読書日記

2016年12月01日

『本物のおとな論』 外山滋比古 海竜社 1000円+税

著者は92歳。評論家、エッセイスト。「知の巨人」と称せられる。専門は英文学。大学教授の傍ら、思考、日本語論などさまざまな分野で創造的な仕事をしてきた。

"この頃、大人がすくなくなってきたのではないでしょうか"との雑談中の仲間の一言に強い印象をうけて、この問題を時々考えてきたという。
知性ある大人になりたい人へ、人生を豊かにする作法を伝えてくれる。

生活経験が大人を造る。大人は生活経験によってみがきあげられる
現代の子供は学校教育で生活とは隔離され、知識だけ覚えさせられ、エスカレーターで5割の子供が大学に行き、そのままエスカレーターで教師や官僚、医師になっりするものだから、大人になり切れていない大人が大勢いて困惑する。
とてもいい指摘である。
先生と言われるほどのバカでなし、という。先生は教室では一人天下。うんと年下の子供との世界である。大人同士社会で揉まれない。一生懸命に仕事をすればするほど父兄からの攻撃にあうらしい。専門知識は視野を狭くしているし。
官僚もしかり。若くて生活を知らない人々が社会をよくしようと奮闘する。するはいいが、社会や高齢者、被災者のことを知らないまま、諸施策を練る。結果、とんでもない役に立たない策が作られていく。
人としての痛みを知らないから、患者を威嚇する医師。怖くて密かに病院を移る。などなど。

各章での抜粋。
自分のスタイルを持つのが大人である。
「私」を消すのが大人である。
落ち着いた声で話すのが大人である。
敬語のたしなみを知るのが大人である。
言ってはいけないことを知るのが大人である。
白いウソをつくのが大人である。
相手を大切にするのが大人である。
威張らず、腰の低いのが大人である。
真似でなく、自分の頭で考えるのが大人である。 などなど。

内容を読むと含蓄があり思い当たることばかりだ。
30にして立つ、40にして惑わず、50にして天命を知る。

災害、不幸、病苦、などなどの負の経験をも、難しいが、経験拡大の方途をさぐるのが、知的人間の生き方でる。
大人たる、やはり、難し、か。と閉めている。
味わい深い1冊だ。

[前の日へのリンク]← 
→[次の日へのリンク]

NewChibaProject