風邪気味をかこって愚図ぐず伏せっていたりして久々に読書できた。
『日本の陰謀』 ドウス昌代 文春文庫 640円
今現在、国際的にはシリアからの移民難民問題が大きな問題だし、日本に限ってみると70数年前の12月8日真珠湾攻撃や日米安保の問題が根深くうずくまっている。太平洋の真ん中ハワイは常夏の観光地としてこの年末年始には大盛況の事だろう。
そんなことを考えながら、手繰り寄せられるようにして著者のこの本を手に取る機会があり、諸々の問題を考えさせられた。
1994年に出された本。副題は「ハワイオアフ島大ストライキの光と影」とある。著者は米国人学者と結婚、永住ビザでとおしている。
1920年、ハワイでサトウキビ畑労働者の日本移民たちが一斉に立ち上がった増給ストライキと、その渦中で起きた会社側通訳・坂巻銃三郎宅爆破事件。この二つの事件が突如スト指導者の大量検挙へと発展。そして日本人移民禁止令と繋がっていくのである。
当時はハワイの人口の半分は日本人だった。明治政府の政策でハワイへの移民を奨励したのである。持ち前の勤勉性でフィリピン人や中国人などよりも地元のプランテーション主には受けが良かった。
が当時はアメリカ本土の西海岸にも多くの移民がいた。アメリカは元々移民で成立している国。が、権勢を握るのはプロテスタントの白人。移民をかつての黒人奴隷のように扱っている分にはよかったが、余りにも数が多くなると脅威になってきた。そこに1929年の大恐慌で、経済的にもどん底へ。
移民排斥運動がハワイにまで広まり、先のストをハワイを乗っ取ろうとする「日本の陰謀」だときめつけたのである。ハワイはまだ準州だったのだ。
ハワイの大権力者が真珠湾近くに大邸宅を構えていたり、真珠湾軍港の浚渫工事に大量の日本人が働いていた事等々、考え合わせると、米国の考え方、勢力拡大などなど、阿部さんがあたかも米国と平等のごとくに頼り切っている姿が惨めに滑稽にすらおもえてくる。
ともかくも、著者の取材力、資料探索力、文章の構築力はとてつもなく凄い。FBIの情報公開法を駆使しての「一言」の調査、法廷記録の展開などなど、もの凄い。ついついこちらも吸い寄せられる。
読み応え抜群のドキュメンタリーだ。現在の日本人はこのような本をもっと読むといい。
でも、感心ばかりしていても、何故か日米の関係のおぞましさが薄められはしない。
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