『夜間飛行』 サン・テグジュペり 新潮文庫 552円+税
航空輸送会社がまだ初期の時代の危険視されていた時代、その中でも危険極まりない夜間飛行を開発していく、会社の支配人と操縦士たち従業員たちとの、壮絶な精神の戦いを描いている。
今で言えば管理職セミナーの危機管理ケーススタディにでも使えそうな内容である。
著者はあのサン・テグジュべり。職業操縦士にして小説家。「星の王子さま」の著者。
人間の尊厳とは何か、地球・自然の威力とは何か、夜とは何か、著者は真剣に問い続ける。自身死活をかけた飛行を重ねたうえでの著。研ぎ澄まされて、冷徹な支配人、新婚ほやほやの操縦士、同乗する無電技師、退職を余儀なくされる老機械工、操縦士の妻、などの心情が記されている。
「外からくる不運というものは存在しないのだが、不運は常に内在する」、とか、「大地は古昔の処女林を取り戻すべく力を働かせるが、人間がそれを押さえつけている」などなど。
ブエノスアイレスを本拠地として、パタゴニア、チリー、方面からの荷物を集荷する。
今、パタゴニアからの飛行機がぐ風に巻き込まれて、音信不通、行方不明になっている。ブエノスアイレスの夜空は快晴。欧州便はパタゴニア便を待たずに、深夜飛び立たせる。
序文をアンドレ・ジッドが書いている。実録的価値と文学性を併せ持つ名作だと。
天空から地を見るというのは全く違った視点なのだろう。
カバー装画は宮崎駿。
深く考えさせられるいい著作だ。
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