『正義』は、ご存じP.D.ジェイムズ著ハヤカワ・ミステリー・ポケット・ブック版。
アダム・ダルグリッシュ・シリーズもの。
今回はロンドン法曹界が舞台。
勅撰弁護士として、明らかに被告が有罪であるのが自身判明していても、相手方の杜撰な捜査をついて無罪を勝ち取ってきた有能な女性弁護士が、学寮の自分の執務室で殺されているのが発見される。彼女は次期学寮長の座をねらっていた。
英国の法曹界は日本のものとは違うのかな、学寮というのがよく分からないが、弁護士が大勢集まっている一つの集団のようだ。日本や米国の大手法律事務所とはちょっと違うよう。
スコットランドヤードのダルグリッシュ警視正が捜査にあたる。
例によってP.D.ジェイムズの作品は奥が深い。
これも読み応え充分。
原題は、『A Certain Justice』1997年。
certainとは「確かな」という意の他に「ある程度は」といった全くニュアンスの逆な意もあらわす。
そこで日本語の題はただ『正義』としたとの訳者の断りがある。
その通りで、真の正義とは何かを深く考えさせられる。
日本で取り入れられた「裁判員制度」、今見直しがせまられているようだ。
俄に指名された素人の裁判員に、正義や、ひいてはそれで人を裁くという事の決断、その結果の重圧などが重くのし掛ってくるであろうことは確かだ。
(10.11.23)
|