世界で、表現の自由を訴えて考えさせられる大きな事件が起きている。
北朝鮮の元首を暗殺するというパロディー映画をめぐって、北朝鮮からサイバー攻撃があったとして映画会社は上映を中止、ハリウッドとアメリカ社会、大統領も含めて、抗議反発を強めている。攻撃には屈しないとして上映を強行した映画館も出た。
見た人の中には、内容に厳しい意見の人もいたという。
サイバー戦とは恐ろしい目に見えない空気世界戦争であろう。
もう一つは、イスラム過激派がパリの週刊新聞社を狙撃。編集会議中の人びとが殺された。この社は長年に渡りイスラムからの警告にもかかわらず漫画などでイスラム指導者を風刺していた。
このテロに関しては、逃げた犯人がパリ近くに立てこもり、大追跡捜査戦が繰り広げられ、死傷者は17人。
そして、パリでこのテロに対する空前の抗議デモが起こる。一般市民のみならず、ヨーロッパ各国の元首たちが先頭を歩いた。およそ160万人。全国で300万人の参加者とも言われる。パリがナチから解放された喜びのデモ以来の大規模だという。
私は、この映像を見て、恐ろしくなった。怖くて身が震えた。何を本当の目的としてこの大挙参加か。
参加しない人びとは何をしていたのか。この人たちの意見を是非聴いてみたい。表現の自由はそこにもあろう。
マスコミはそこまでは取材していなかったのか。
テロは許せない。当たり前だ。
だが、表現の自由とは何か。
あのパロディー映画はみていないし、あのフランスの風刺漫画もみていないので、なんとも言えないが。
パロディーとか風刺画などは、よほど上等のエスプリが効いていないと、悪質な誹謗中傷であり最低の趣味であろう。
昨夜、ゴールデン・グローブ賞受賞式のテレビ中継を見ていたら、レッド・カーペットで、ヘレン・ミレンが真っ赤なドレスの胸元に「ペン」形のブローチをつけて説明していた。受賞式では、司会者が北朝鮮を駄洒落の種にしたり、メリル・ストリープを引っぱり出して何か揶揄して、大受けしていた。
私は見るのが気分悪く、止めてしまった。
ドイツでは、フランスのデモ行進を受けて2万人の反イスラムデモが行なわれたが、一方でイスラム社会との共存を探ろうとするデモ行進も同じ規模であったと報じられていた。ドイツには人口のおよそ5%がイスラム系、フランスは7%だという。
イスラムとヨーロッパは、大昔から、サラセンの繁栄、神聖ローマ帝国の東西分裂、イスパニアの征服(グラナダ等に遺跡が残る)、十字軍遠征、アフリカの植民地化などなど、日本には計り知れない交流対抗の地政学的歴史がある。
表現の自由とは、自由っぱなしではなく、その結果も持つ重い責任があることを肝に銘じておきたい。
(15.01.13)
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