悦子の談話室

化粧をする女

     
 

所要で六本木まで出かけた帰り、電車の中で、立った私の前に座っている若い女性が、やおら大きなバックから化粧品を取り出して、本格的に化粧をし始めた。
私など、その変化に興味津々でついみつめてしまう。

電車の中での化粧といえば、こんな可笑しな話がある。
今の口紅は、グロスばかりでしっかり色の出るものがない。それでは中年女性は疲れた顔に見えて困るわね、グロスってどう使うの? といった話しを家でしていた。
すると、全く女っ気がないと思っていた甥が、「グロスは初めに塗って、次に色のあるものを塗るよ。最後にグロスの人もいる」と、何故かぎょっとする発言をした。
愚にもつかずおっかなびっくり「どうして知ってるの?」と聞く。
すると、「電車の中でしているもの。怖いことに、はじめと全然違う顔になるんだなこれが!」

何故かほっとした。
と同時に、女性は、特に若い女性は(ま、年増の人の車内化粧は見かけたことがないが)、こうして男性からおかしな存在とみなされてしまうし、女性の品格を貶めていやしないでしょうか。

ほんのりと知らずお化粧していてきれい、あるいは隠された美へのほどこしといった、奥ゆかしい美しさは全く影をひそめている昨今である。

件の女性は化粧が下手なのかもともと土台がダメだったのか、あまりいい仕上がりにはならなかった。

(07.05.25)

 
     

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