悦子の談話室

涙の会見

     
 

日頃から余りテレビの報道番組や新聞は見ない。
報道は究極の事象の一端を取立てて扱っているので、それをやわな神経で画面に釘付けで見ていたら、こちらまで神経がやられてしまう。報道キャスターやタレントなどは素人同様、ただ感情論で不安を煽るばかりだし。
そしてACとかいう機関で流すコマーシャルの暗く、みんな一緒で、出来ることからしましょうとかいう連呼がたいへん不評だ。こちらの心持ちまで落ち込んでしまうと。

今般は、ニュースだけは丹念に見るようにしている。
東京電力の福島原子力発電所の会見で、低レベル放射性の水を海水に放出せざるを得ない処置に及んで、会見者の一人が泣いた。地元に被害拡大を抑えようと渾身の努力に励んだ末のやむを得ざる選択だったのだろう。
地元への申し訳ない気持ちと、力及ばなかった悔しさで感極まったか。
東京電力で仕事をしていた者としては、原子力発電所や現場社員の捨て身の働き振りを少しは知っており、ニュースでこの会見を見てこちらの胸も押しつぶされそうだった。
高度に専門的技術的なことに関して、この事態に、憶測で素人が言わない方がよい。
未曾有の被害の中、いわば地獄のような中で、現場の人々は極限のぎりぎりの仕事をしているはずだ。

極まって泣くくらいの人間性は許してやって欲しい。
一部マスコミの、東京電力を袋叩きにしていれば気が済むのならば、それでもよかろう。
が、それよりも今後のことを、発電所の回復もさることながら、日本社会の新たな力強い回復を願おう。

姪は東京の警察官である。
被災地に救援隊で1週間以上出かけている。
時たま母親にメールが入るらしい。もともと仕事に関しては寡黙な姪だが、"言葉では言い表せない惨状"と。

(11.04.05)

 
     

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