悦子の談話室

南葵楽堂の記憶 コンサート

     
 

南葵楽堂(なんきがくどう)とは、紀州徳川家16代当主徳川頼貞(1892-1954)が麻布飯倉の屋敷内に大正8年に建てた音楽ホールである。そこに付設された本邦初の音楽図書館「南葵音楽文庫」にカミングズコレクションがある。ベートーベンやヘンデルの手稿をはじめ貴重な資料が収められている。

カミングズコレクションとは、英国人W.H.カミングス(1831-1915)が長年蒐集した古い音楽の楽譜や書物は4500点にも達した。この蔵書はビクトリア時代最高の個人音楽資料コレクションとなったが、彼の死後1744点がオークションにかけられる。そのオークションを日本で知った頼貞氏は日本から代理人を通して参加し、約400点を入手した。因みにアメリカ議会図書館も参加していたが59点しか競り落とせなかった。

徳川頼貞氏は、大正時代にケンブリッジ大学に留学、その折音楽堂建設の案を練る。アメリカ経由で帰国の折、ニューヨークで資産家の寄付による芸術学術施設に感銘を受け、帰国後直ちに南葵楽堂建設に取り組む。

幾多の戦禍などを経て、南葵楽堂の建物は現在熱海市に移築されている。
音楽文庫のコレクションは幸いなことにそのまま保存されている。

昨日(09.02.01)、このコレクションを甦らせようと、東京港区の文化事業の一環である「音楽フロンティアみなと 再発見コンサート」として「麻布飯倉 南葵楽堂の記憶」と題したコンサートが開かれた。
虎ノ門にある「JTアートホール アフィニス」で開催。
古い音譜に忠実に、ヘンデルやパーセルなどがピアノでなくチェンバロの四重奏で、そして素敵なソプラノと、たいへんに素晴らしいコンサートであった。
私にとっては全てが初めて知ることばかり。
はるか時空を超えて、さまざまな音楽活動に思いをめぐらすことのできた、心温まるいいコンサートであった。

このコンサートは、慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構やアート・センターも助成していて、ボランティアとしてコンサート・サポーターがいる。

サポーターは、港区+慶応アート・センター主催アート・マネジメント講座上演係ワークショップを受講した方々である。このコンサートのサポーターの一人は私の友人。こうした優れた企画に積極的にとりくんで生き生きとしている姿が、きれいで輝いていた。

(09.02.02)

 
     

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