ジョン・グリシャム著『謀略法廷』新潮文庫を読んで暗い気持ちだ。
彼の著書は先ず『依頼人』で興味をもった。
1ドルで子供の依頼を受ける女弁護士の話。映画や米国ドラマにもなってそれらは観た。気楽におもしろかった。
次に気がつけば、トム・クルーズ主演の「ザ・ファーム」もグリシャムの原作だ。これも観た。おもしろかった。
で、今回の『謀略法廷』。
考えさせられた。
米国長者番付にも載る巨大企業グループ総帥が、自社工場の発がん性物質垂れ流しの損害賠償訴訟で敗北。株価暴落。そこから上告し反攻する汚い大がかりな策略。金に糸目をつけずにそして当然だか全く表にでず、州最高裁裁判官選挙でとる恐るべき手。
最後に笑うのはこの億万長者のみ。
裁判官も弁護士も教会も、そして被害者たちはもちろん、誰も救われず、むしろ貶められるだけ。
原題は、『THE APPEAL』(上告)。
日本では裁判員制度が進められているが、こんなことで人の裁きができるのか。
"ひとを裁けるのは神のみ"という重いことばがのし掛かってくる。
(10.08.14)
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