エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

オリンピックと非戦”(2004年09月11日)

 今回のアテネ・オリンピックは、過去最高のメダル数を獲得した大会で、日本国内も大いに盛り上がった。素晴らしい成績に拍手を送りたい。

 この好成績には、科学的技術の進歩、精神面の強化、資金力などいろいろの裏づけが働いたのであろう。そんな中で印象的だったのが、アーチェリーで銀メダルを獲得した選手である。中年ということもさることながら、コーチもマネジャーもなしで、唯一人で戦い続けての結果だったそうだ。支えは教え子たち。彼らとの素晴らしい師弟関係にもメダルをあげたい気持ちになった。

 沈みがちだった日本の気配に明るく活を入れ、世界の舞台で決して引けを取らない日本人の力に、国をあげて大いに勇気づけられた感がある。オリンピックは都市の催しであるが、選手は国の代表として競う。その国の事情を反映している。ドーピング疑惑が絶えないのも、金メダルを獲得して帰国すれば、それだけで国の英雄として暮らし振りも変わるという国が多いからか。

 古代オリンピックの勝者も英雄だった。古代オリンピックは、戦の絶えない中、力の誇示は競技、そしてその期間は戦をしないとの約束で始められた。近代オリンピック憲章にも平和な世界造りに貢献する旨が記されている。

 オリンピック発祥の地アテネで開催された今期オリンピック期間中、イラクでは戦いが続いた。サマーワの日本自衛隊駐屯地に爆弾が発射されもした。オリンビック参加国は非戦のメッセージにサインするのだが、参加国約 200 の内、米国と日本とその他数カ国はサインしなかったとテレビが報じた。ブレア首相はサインしている映像が流された。

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