エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

自由競争の落とし穴”(2006年02月11日)

 規制緩和、民営化、改革などの掛け声のもと、法や制度の網の目を潜った自由競争が激化している。現在の経済活動では、消費者や市民は完全に蚊帳の外に追いやられている。

 政治の世界でも同じことがいえる。刺客などといわれる衆院総選挙の仕方をとった辺りから、どうも世の中がおかしくなってきている。選挙は喧嘩ではないはずだが。その結果、勝ち組負け組みなどといったなさけない日本語が飛び交うようになった。ここには、人として、組織としての品性、相手を思い遣る豊かなこころというものが、全く欠けてきている。


 自由競争とは、官の無駄な縛りを解いて、効率的に組織を運営発展させていくよい方法ではある。しかし勝ち組と言われて急成長してきたところは、この自由競争を履き違えている。このところ次々に愚かな不祥事が明るみになるので、こちらの感覚が麻痺してきそうだが、最近では、大手ビジネスホテルチェーンが、バリアフリー法を潜り抜けて、身体障害者用の駐車場を狭くしたり、取り壊して別の用途に使うなどして社会的弱者を蔑ろにして発展してきたなど、言語道断だ。

     

 郵政民営化は、国家規模の事業を自由競争に置くことであり、今後さまざまな事業外注が行われるはずである。正しく競争して欲しいものである。

 ところが、ある新聞によると、簡易保険部門が国債などの債権管理業務を外部に委託するための入札で、公社が事前に算定していた予定価格は数十億円だったのだが、実際はみずほファイナンシャルグループなどが出資する資産管理サーザス信託銀が、なんと1円で落札したらしい。

 郵政民営化は消費者の便利のためとばかり思い込んで、ゼロ金利に近い状況を凌いできたのに、蓋を開けてみれば、兆の単位で得をするのはやはり大銀行なのである。庶民は銀行の手数料の高さにかねてから我慢がならない。が、簡保が保有する債券は国債だけでも50兆円以上あるのだから、1円で落札しても赤字にはならないと。それはそうであろう。

 

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