エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

家庭用エネルギー機器の欠陥事故続出”(2006年08月11日)

 松下石油温風器事故は、1985年から92年に製造した機器の欠陥により一酸化炭素中毒事故が2005年中に5件発生。二人死亡、8人負傷。
  パロマガス湯沸かし器事故は、同じく1985年1月にすでに機器の欠陥により一酸化炭素中毒による死亡事故が発生していた。

 松下の事故の場合は、事故を重くみた経済産業省が05年11月に消費生活用製品安全法に基づき消費者に危険性や機器回収の周知徹底を図るべく初の「緊急命令」を松下に発動、松下はテレビで放送したり日本全世帯や宿泊施設などに葉書を出して周知を図ったが、欠陥機器が全て回収されたわけではない。

 パロマの場合は、85年以降05年までの20年間に、判明しただけでも死亡事故を21件数えるにいたっていたが、今年の7月に警察の調べがあるまで、経済産業省は何の措置もしていない。
  しかも、パロマ社はその機器発売の2年後には、既に欠陥が起こりうることを把握していたというではないか。

 消費者に“快適で安全な暮らしをお届けする”という宣伝文句の陰には企業エゴしかなかったのか。この2社の不祥事に典型としてあらわれている、企業における消費者の命に直接かかわる安全思想の欠如の恐ろしさをうかがい知ることができる。
  従業員の中に一人くらいは告発する勇気のあるひとがいなかったのか、社内の情報伝達が全くないのか、特にトップにデメリット情報をあげることがそれほど無理なことなのか。

 デメリット情報は重要な経営資源だ。企業トップはそれを聞く耳がなければ失格だろう。それを隠蔽してきた高度成長期、バブル期のつけが企業不祥事というかたちで今、ぼろぼろと現れはじめているのではないか。コンプライアンスがいわれ、古い企業文化を払拭し、社会に開けた風通しのよい新しい企業文化を創ろうと、どこの企業も体制を敷きなおしたはずだ。が、このところの企業不祥事続出を見るかぎり、旧態以前ではあるまいか。
  特に、消費生活の安全に係わる企業は、ここのところを改めてしかと受け止めるべきである。
 

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