エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

苫屋での長期夏休み中”(2006 年09月11日)

 知人の調査会社で実施している「リタイア生活の幸せアンケート」などというものが届いたりして、完全リタイアではないものの、自由な時間の使い方をたんのうする贅沢をしている。この夏も初秋まで、ふるさとの千葉県九十九里浜にある苫屋で過ごす。

 都会のめまぐるしい情報に惑わされたくなくて、昼にテレビニュースを見るくらい。新聞は、朝夕あっても自ずと地方では情報鮮度が少し悪くなるが、ある原稿書きのためにこの時期丹念に目を通す。

 その昼のテレビニュースでびっくり。朝から東京は大停電が起きているらしい! 都会から離れて自然にとっぷり浸かっている生活には、全く影響がなかったのでぴんとこない。そして、テレビで、完全に他所の出来事としてみている自分に、これまたびっくり。

 マンションの水道が止まったり、通勤電車が止まったり、道路の信号機が止まったり、ビルのエレベーターが止まったりと、都市機能の突然の停止でたいへんな様子。人命に係わる病院などはどうしたかしら。自家発などのバックアップ・システムが完備してきているのかしら。

 地方に居て他所の出来事とみているせいか、報道で知る限りにおいては、市民の大停電によるパニックや、停電へのひいては東電への怒りはなかったようで、諦めというか冷静な反応と見受けられた。これが東電自体の発電や送電のトラブルで起きた大停電だったらおそらく違う反応が起きたのではなかろうか。

 その日、ある知人から早速メールが入った。
“生活が電気によって成り立っていることがよく分かった。しかし、重要な基幹送電線のバックアップが同じところを通っているのはいただけない”と。成る程。
 
  それに対する私からの返信は、”でも、別のところに敷いていくのは電力会社にとって至難の業かも知れない”と、完全に他所の他人事のように受け止めている自分に、またびっくりしたものである。

 

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