エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

インドの旅”(2007年08月11日)

 インドで初の女性大統領が誕生した。
  インドにはガンジーやネールなど近代だけでも世界に名だたる指導者が多い。大英帝国からの独立という国家の苦難がそうさせた。
  インド大統領は実質的政治権力をもたないが、古代から外敵と勇ましく戦ったクシャトリア(軍人カースト)出身の女性プラティバ・パティルさんに、大いなる健闘と元首としての尊厳を期待したい。

 このインドに、今年の春、かねてより念願だった旅が実現した。
 インドは雄大な国。北部のほんの一地域を10日間旅しただけだが、多様な宗教、過去と現在、極貧と莫大な富が混在していて、柔な日本人に強烈な印象を与えてくれる。

 先ず宗教。圧倒的にヒンドゥー教徒が多い。ヒンドゥー教は多神教であるから神さまや神聖なものの多いこと。牛も勿論その一つで、道端や有料道路にまで尊大にたむろしている。
  ベジタリアンが多いのもここらに訳があるのか。ガンジス川での沐浴や水葬も大勢で悠然と行っている。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の小競り合いはいたるところで見た。

 次に歴史。古くは中東のイスラム民族の侵入、近代ではヨーロッパ諸国とりわけ英国の支配を受け、それとの戦い。
  有名な王妃廟タージ・マハルはイスラム国家統治の証であり、アグラ城に英軍の大砲が打ち込まれ砕かれた黒大理石の玉座や、東インド会社の論外な暴権振りに、英国統治の理不尽をみる。

 そして格差。IT産業が隆盛とは一都市の話。
  他の多くの市や村では、子供や女性が頭に水や薪を載せて長い道を徒歩で運んでいる姿を多く見た。家庭の燃料はよくて石炭、薪や乾燥牛糞が普通の生活。
  そうした中、忽然とマハラジャのこの世とは思えぬ瀟洒で贅沢な城や居城が出現する。この富が半端でない。山を掘ればダイヤモンドやルビー、エメラルドが出るという地なのだ。

  それに貴重な香料と、欧州帝国主義が触手を伸ばした所以である。

 

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