エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

イタリア紀行”(2008年02 月11日)

 文豪ゲーテではないが、イタリアに憧れて、ベニスの街が沈まない内に、また発掘がすすむポンペイ遺跡を是非この目で観たく、1月中旬イタリアを旅してきた。

 滞在はゲーテの一年半と違ってこちらは忙しい現代日本人の旅、たったの8日間ではあったが。

 私にとっては3度目のイタリア。今回は気ままな観光旅行とあって、ミラノ、ベニス、フィレンツェ、ピサ、シエナ、アッシジ、ナポリ、ポンペイ、ローマと、あちこち広く見聞した。まさにシーザーの名言「行った、観た、…」である。

 2000年前、欧州・地中海沿岸一帯に大古代ローマ帝国を築いた人々の中心地。そこでは、宗教、土木建築、政治、戦い、その他今日西洋の基礎となる、いや今日よりもはるかに完成された文化がいきいきと展開していた。そして現在はEU統合。道路国境はフリーパス。特に東欧後発国加盟で物資を運ぶ大型トラックの往来の夥しいこと。

 はじめてのピサでは、斜塔よりはドゥオモの美しい内部装飾に感銘した。壁など白黒の色彩がイスラム文化の香りを放つ。それもそのはず、ここはジェノヴァなどと地中海交易の覇を競った海運都市だったのだ。

 百万ドルの夜景といわれ、ナポリを見ずして死ぬなかれと言われたナポリは、古代にはギリシャが、そして、中世にはブルボン家、ハプスプルグ家と、外国が欲し統治を続けたナポリは、今日何と「ゴミの山」。
  地球環境問題などなんのその。廃棄物処理産業にマフィアが絡み、処理場は満杯で閉鎖とか。そして交通モラルの無さ! 信号機は飾りとばかりに無謀に前につっ込んでくる女性運転手。
  明治のはじめナポリを訪れた岩倉具視は、「馬車の狼藉甚だしく、…」とすでに記録しているらしい。

 須賀敦子や塩野七生も綴ったイタリア。奥深いことこの上ない国だ。

 

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