エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

変わる社会サービス”(2004年02月11日)

 今日は、道路公団や郵政公社の民営化論を筆頭に、市民生活に直接関係してくる社会サービスが大きく変わろうと動いている重要な時期である。行政機関や教育機関、そして民間企業までもが組織を変え、よりよいサービス実現のために模索中である。

 営団地下鉄は、この 4 月から東京地下鉄鰍ニ生まれ変わるため、マークをサブウェーの S 字からメトロの M 字型にする。

 国の独占であった郵便事業は、昨年 4 月から民間に開放されたが、はがきなどの「一般信書」を扱う参入には、全国に約 10 万のポスト設置など規制があるためまだ民間ではおこなっていない。規制はゆるやかだが扱うものが限定される「特定信書」は、数社の運送会社が許可を得ているが実現はしていない。

 民間経営のエネルギー業界には、新しい「自由化」という波が押し寄せている。そして電力業界では原子力発電事業をめぐり、核燃料サイクル事業も含めて、重大な計画見直しの時期にある。国の原子力政策の最高機関である原子力委員会が、 5 人の委員のうち 1 人を残して 4 人が入れ替わり、新しくスタートした。

 こうして、多くの変革の努力がさまざまな分野でなされている。変革の目的は、国民への社会サービスの向上のはずである。ところが国民にはそれが殆ど見えてこない。見えていないから、受け入れることもできないのである。なぜか。

 変革の努力が、国民、消費者のためのサービス変革にまで意識されず、まだ、事業経営、組織改革の意識の段階に留まっているからである。そこに留まっていてはいけないのであだ。消費者の声を聞くセンスがなく、消費者ニーズ不在の新しい事業体制をどれほど検討しても、元の木阿弥、これからの社会に受け入れられ、活かされていくのは難しい。

 ラベルの張り替えではもはや事足りない。中味の、手法の、人のこころの、大変革が求められている時なのである。

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