エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

リスク・コミュニケーション”(2005年08月11日)

  スペースシャトル・ディスカバリーが打ち上げられた。乗組員の野口聡一さんの元気な活動が報告されると、何故かほっとする。

 NASA はディスカバリーを打ち上げておいて、断熱材剥落の問題が解決していないとして、今後問題が解決するまでスペースシャトルの打ち上げを見合わせると発表した。乗組員との余程のリスク・コミュニケーションが図られた上での打ち上げだったのだろう。

 リスク・コミュニケーションとは、日本では食品安全に関することや、化学工場の安全に関することに用いられる場合が多い。

 今日リスクが 100% 避けられることは少ない。一般の暮しでも、魚を食べるとどうしても微量の水銀摂取の問題が出てくる。 BSE 感染牛の問題にしてもしかり。

 そこで、科学的知見と安全の範囲など、出来るだけリスクを少なくするための科学的情報を、特にいわゆるマイナス情報を、行政、企業そして消費者が共有し、意見の交換を行うのである。

 現在、あらゆる分野でこのリスク・コミュニケーションが求められているのではなかろうか。危機管理 ( クライシス・コントロール ) に至る以前に、日常の場で必要であろう。

 

 ロンドンでの同時多発爆弾テロで、ロンドン警視庁は充分に予想して防止の対策をとっていたという。東京など日本の大都市でも警備は厳しくなっている。市民は電車に乗るにもリスクを覚悟して乗車するというのが今日の姿である。

 直下型大地震に関してもあらゆる検討がなされているようだ。市民も大地震を気持ちのどこかで覚悟して生活している。

 化学的なリスクだけでなく、人災的、天災的リスクと背中合わせの現代社会。

 ここで重要なことは、下手にマイナス情報を隠し立てしないで、科学的に裏づけられた情報ならば、速やかに市民、消費者と共有し、意見の交換を図るということである。 昨今、企業でも情報公開は当たり前になってきているが、消費者とのコミュニケーションで一番評価されるのは、速やかなマイナス情報の開示である。

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