電気新聞「今週の一冊」欄に載せた最近の書籍紹介

仕事ができる人のノート術』(2003年11月7日)

仕事ができる人のノート術

樋口健夫著
東洋経済新報社 1500円

 誰でも膨大な資料や記録の保管には悩まされている。この本では、一言でいえば、一冊のノートに何でも書き込んでゆくという、実践派の著者の長年かけた工夫の極意が披露されている。

 スケジュール、住所録、ビジネス会議のメモ、商談のメモ、思いついた発想のメモ、日記などなどを、ばらばらのメモやノートに書き散らさない。一冊にまとめて、肌身離さす大切に持ち歩けば紛失を防げるし、いつでも何でも記述でき、記録しておくことができる。

 手頃なサイズがA5のファイルノートだと著者は辿り着いた。そして手帳は二十年前に止めた。ファイルノートにいろいろと加えたり貼り付けたりの工夫を凝らして、何と260冊もが残されているという。これが後々、例えば会議や商談でもめたりしたときの重要な切り札になってきた。著者は、海外駐在も多い商社マンであり、「アイデアマラソン」の提唱者であるから、書いてその記録を残しておくことに限りない工夫を凝らしてきたわけだ。

 とにかく、先ず書くことである。メモすることである。訪問先で、打ち合わせ中に、待ち時間に、寝る前に。そのメモを、ちらし広告の裏に書いたりするからどこかに失せてしまうのである。実は大切な記録になるのだから、絶対に無くさない一つのノートに書き留める大切さを説く。

 著者の仕事量は膨大だ。それをこなし、約束をポカせず、家族を大切にし、趣味にふける余裕ももつ秘訣は、実は強力な自己管理術ではなかろうか。その鍵となっているのが、著者名付けるところの仕事と生活の中心にあるこの「統合 (integrated) ノート」である。そしてこれがかけがえのない自分の“知的 (wisdom) 蓄積”となってくるのであろう。海外赴任先で商社マンの目でみた独自のガイドブックを制作したり、毎年一冊の著書出版を果たしたり、両親の自分史作成を促したりとの業績につながってくる。

 文具好きが高じて、先端電子機器もワープロからパソコンまですでに数十台を使い続けてきた著者がローテクのノートに固執するのは、その保管の安全性と、それからここが一番大切だと思うが、手で書くという脳活動の活発化のためだ。日本語を書く能力がだんだん失われつつあるのを、日々実感しているひとは多いだろう。パソコンは叩くだけだ。

 著者が新しく情報管理の助けとして加えているのが、PDA(携帯デジタル端末)である。

◆アイデアマラソンシステム(IMS)公式ウェブサイト

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