パトリス・ジュリアン著
碓井洋子訳
おさないまこと挿画
鰍ノじゅうに出版
1800円
著者は次のように説いている。人生とは、自分 ( 作者 ) が描く物語である。運や偶然、惰性など、不可抗力によって強いられるものではない。つまらないとか楽しいとかは、自分がそう思うからそうなのだ。外の誰もそんなことを気にかけていない。いやなら別の物語を書くべきだ。人生という物語の作者は自分でしかなく、主人公も自分でしかないのだから。
人生とは、その時その時の選択であり、決断であり、実行である。それを左右するいくつかの大きな錯覚が本著では指摘されている。先ず、過去は存在しないということ。思い込みという想像でしかない。この実存しない思い出に執着していて、それが現在の自分の人生を支配していると錯覚していることが多いというのだ。悪い思い出にしがみついていてもはじまらないということ。
「想像」は、これからを考えるために有効な力である。万能だ。が、けっしてネガティブな姿勢にだけは陥らないように。ネガティブな感情を払いのけるというのではなく、逆にあるがままの自分をうけいれてやるのだ。そして、何ものにも囚われずに、おもいきり自由に、自分が本当に興味のあることをすればいいのだ。
例えば、ひとに好かれたい、わがままだといわれたくない、ひとのために、などとの思惑は、少しもひとによい印象を与えない。いいひとを演じていると、自分自身が混乱して最悪の事態に陥る。自分のために自分の信念を通してこそ、ひとにも自分にもよいものとなる。気兼ねなど捨てられる情熱を持てということ。
そして、自分を愛してやることである。自分が本当にしたいことを全身全霊傾けて流れに沿って泳いでいれば、自分を自然に愛していけると。
自分の人生は、いいも悪いも自分でつくるもの。ここで著者は、物語の作者 ( 自分 ) には100% の自由を求め、主人公 ( 自分 ) には100% の責任を求める。全責任を持つことからはじめて自由が生まれてくるということ。「個」が確立して、呪縛から開放されるということであろう。
この著書の特徴は、読者に実際に書くことを要求していることでもある。行動に移さないと人生は変わらない。多くの Q と Ex が出てきて、それらに応えて書いていくと、自分の人生、感情の整理、今後の方向の「物語」ができあがる。それを書くには、『 ONE 』という本著と同じ出版社発行の、色鮮やかな手帳シリーズがいい。自筆の自分だけの物語であり、世界に一冊しかない本とる。
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