電気新聞「今週の一冊」欄に載せた最近の書籍紹介

国家の正体』(2006 年02月03日)

日下公人著
KKベストセラーズ
1500円+税

副題に「小泉改革の先を考える」とある。

「国家意識」が日本にあるかないかが本著のテーマである。国家意識が、歴史の流れや、官庁、国家公務員、自民党などにどうないか、あるいはあるかを分かり易く解説している。結論からいうと、今はあまりない。
従っていわば日本の支配者であった大蔵省も、政党の党益中心政治の侵入を受け大甘予算を乱発して行財政改革の対象になったと。省益だけの各官庁はさらに国家意識がないし、国家の利益を考えて地域の都合は考えない議員は落選する、という現象から国民も同罪だ。

ただし国家意識は国難に応じてあればいいので、内政上の困難を外国のせいにしようとする国家意識の強烈なブッシュや江沢民などといった世界に迷惑な指導者は困りものだと。

米国第七艦隊司令官との会食で、「20何歳かで海軍に入った時、大統領の命令には命をかけて従うと宣誓した。部下もしている。だからもし北朝鮮が原爆を積んで日本沖にきて脅迫し、日本の要請で大統領から日本を助けよと命じられれば、決死隊を送って原爆を無害化する」と言われた、説得力ある話しを披露する。ゆえに米国は堂々の国家である。アメリカ人は自分と国家との関係を「誓う」のだ。それが国民であり、その国民の集まりが国家であり、国家の力なのである。

グローバル・スタンダードを唱える米国の主張に偏りすぎる日本の学者や役人には大いに疑問を投げかける。世界ナンバー・ツウに日本を育てた日本経済学は世界に広がりつつあるのに、アメリカ流の理論経済学を教条主義的に受け取って、そのメガネで日本を見ている。現実を知らない。頭デッカチの偏差値秀才たちはその蜃気楼に騙される。こうした米国流マネーゲームはそろそろ現実の米国も日本も嫌気がさしてきたから、”遅かりしホリエモン”である、と著者は昨年の秋にすでに分析している。

そして今日はむしろローカル・スタンダードの時代であると。ヨーロッパが先ず米国から囲い始め、ロシア、中国などと地域主義を出し始めている。日本は、もともと凄い国で、1500年の文化文明の蓄積のある国なのだ。建国230年の米国の、自由だの民主主義だのアイデンティティだのの底の浅さが著者には鮮明に見えている。

日本は自分の国のもっている素晴らしさ、ありがたさをもっと自信をもって考え、日本国としての対応を考え、実行していかなければならないとしている。

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