いつも野菜や下の浜で採れたぜんな(蛤の小振りのもの)を持ってきてくれる近所の80歳代のおばさんがいる。
ちょっと話し込んで行った。
「えつこちゃんに聞けば分かると思ってさ」と。「アイ・ピーって何?」
「ン……。アイ・ティーかな? ITならば情報や通信のこと」と私。「携帯電話やパソコンのこと」
お孫さんが就活で念願のIT関連会社から内定があったのだそうだ。「どんな仕事なんだか、私にはさっぱり分からなくてさ」と。
「IT関連企業から内定とは、凄く優秀ですね」
「別の孫は、帰ってくると私に抱きついて "おばあちゃんの匂い大好き! いい匂いっ" て 言うよ。福祉の仕事が好きでその資格を取るんだって。小さい時からピアノを習わせていて母親は保母さんにしたかったらしいけど」
「心持ちのいいお孫さんだこと! おばあちゃんが御主人を介護していた姿をちゃんと見ていたんですね」
御主人は若い頃素敵な青年だった。老人性痴呆症に罹ってしまい最後の数年介護がたいへんだったようだ。
「今でも東金まで友達と自転車で行くよ。楽しくてね」と、元気そのもの。
家族に囲まれて、自慢の孫たちがいて、話しを聞いていてこちらまでほのぼのとしてくる。
Copyright © Etsuko Shinozaki 2003-2015 all rights reserved