『銀のみち一条』 玉岡かおる 新潮文庫 上巻590円+税 下巻630円+税
この作者は初めて読んだ。近所の知人が貸してくれたものに入っていた。
凄い小説である。大同2年(807年)に開坑し昭和48年に閉山した日本屈指の銀山、生野銀山を舞台に、明治初頭から大正初冬までの、鉱山で働く一番の坑夫雷太を中心に、町の名士外科医の一人娘咲耶子、町一番の芸者芳野、咲耶子の侍女志真が、紆余曲折、愛の縺れはありながらも真実まごころで生きぬいていく姿。
地方の鉱山近代化の流れもこうしたことであったのか、国を支えた明治の工業革新のひとこまも描かれている。
弱きを助けるという祖父からの教えを一途に実践していく雷太の心根に救われる。雷太のように強くなければ弱い者に優しくはできないのだ。
かつて環境問題の講演で訪れた秋田県大館市の隣町にある小坂町の小坂鉱山跡を案内されたことを思い出した。この鉱山は明治になって開坑されたようだが、この小説に出てくるモダンな事務所ビル、廻り舞台もある劇場など、保存されていた。
http://www.newchibaproject.com/diary/slowlife/20071209.html
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