『知の旅は終わらない』 立花隆 文春新書 950円+税
先般亡くなった知の巨人と言われた著者の終盤に近い時の著作。副題に「僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと」とある。「田中角栄研究」や「日本共産党の研究」、「宇宙からの帰還」、「脳死」などなど難いテーマをとりあげているので、近寄り難かった。が、亡くなってみて、彼の知性を覗いてみたかったのだ。
この本は彼はジャーナリストといったらいいのか、あたかも語っているように実に読みやすく書いている。歯切れよくどんどん引き込まれていく。この本はある種彼の知の自伝である。
占領軍のIQテストで小学1年の時に校内一番になるだけあって、その知能は抜群。知能が抜群ということは、次々と興味が湧きそれを理解できること。
小学に入る前から読書癖は始まって、童話、小説、漫画などほとんど網羅した。読書熱は中学でも加速。
高校時代には当時旺文社の「大学入試模擬試験」で全国一番になる。
東大時代19歳のときに、原爆被災唯一の国民としてその悲惨な実情を世界に知らしめようと、被爆の映像映画をもって非核世界会議にカンパを頼りに欧州に貧乏旅行をする。ここで書物で知る以上に現地で特に欧州の歴史、美術というものに触れてその凄さに感銘を受け、その後の著作やテレビ番組制作に現地を隈なく奥深く取材していく姿勢がうまれた。
これを可能にしたのも知の巨人であるが故。凡人にはおよそ及ばぬことである。もっと生きて、このコロナ時代をいかに分析していくか知りたかった。
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