『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』

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読書日記

2021年03月02日

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』 ジョン・ル・カレ ハヤカワ文庫 1100円+税

イギリススパイ小説の大御所ジョン・ル・カレが先般亡くなったと報道されていた。90歳程かな。彼自身オックスフォード大学卒業後イートン校の教師となり、東西冷戦時には諜報機関MI5に入りMI6へ転属となり、旧西ドイツのボンにあるイギリス大使館二等書記官その後ハンブルグの総領事館に勤務したから、スパイの道をまっしぐらというかよく知り尽くしている世界なのではなかろうか。
オクスフォードやケンブリッジは優秀な学生をスパイ要員としてリクルートするのは有名。この『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974年)でもそれらの経緯が詳しい。この小説の運び方は、首になったかつてのイギリス情報部(サーカス)の部員ジョージ・スマイリーが現在のサーカスに"もぐら"がいるそれは誰かを探り当てるようホワイトホール(外務省高官)から依頼され、もと同僚たちにかつてのことを告白させていく、以外な人物が二重スパイと判明するという筋。ジョン・ル・カレは実に緻密に記述し丁寧に展開させていく。凄い書き手だ。
大分前に現実としてあるイギリス政府高官や要人が東側と通じていたとして検挙された事件を思い出す。007だけではなく、知的に深く情報の戦いが続いているのがスパイ活動である。何処に誰がいるのかわからない。諜報とは英語でインテリジェンスという。東西冷戦下だけでなく今も多分活動は続いているのではあるまいか。
彼の著『寒い国から帰ってきたスパイ』(1963年)も読んでいる。ベルリンの壁ができたのが1961年。3、40年前に読んだのでよく理解できなかったであろう。ほんとに寒く暗い印象がのこっているだけ。今回『ティンカー、…』は真剣に読んだ、すると読めば読むほど引きずり込まれていく。膨大な資料が対話というか告白を聞き取るとして、そしてスマイリーの記憶のフラッシュバックも挿入されて平凡に記述されていてしかもその一語一句が重要で、こちらはその整理がたいへんだ。多分もう一度一から読み直すな、この調子では。
ともかく面白い! スマイリー三部作もあることだしね。まだまだ愉しめる。

 

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