『阿部一族・舞姫』

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読書日記

2018年08月27日

『阿部一族・舞姫』 森鴎外 新潮文庫 520円+税 

白内障が進んでいて、ものを見るのは辛いのだが、どうしても本を読まずにはおられない性分だ。

森鴎外という人は凄い人だ。夏目漱石と違い国運を担った留学でしっかりと外国文化と馴染み身に着けて帰ってきた。漱石はノイローゼになって閉じこもり負けてしまったが。確か、鴎外は日本で初めてゲーテの『ファウスト』を翻訳した。

この文庫本には、自身や友の留学体験を基にした小説や、内外の歴史を基にした小説が収められている。
『舞姫』は自身の恋物語、『うたかたの記』は友の恋物語を書いているようで、これはノイシュバンシュタイン城の王ルードヴィッヒ二世の狂気と恋と死を絡ませている。
『阿部一族』は江戸時代の壮絶な武家断絶。『じいさんばあさん』は江戸時代の武家の夫婦愛。
そして、『鶏』、『かのように』、『堺事件』、『余興』、『寒山拾得』。それぞれ短編ながら、時代の流れに置かれた人間の心理描写を平易に物語っている。

明治・大正期の作者の作品は、社会・体制・歴史の流れの様々な葛藤の中で生き抜いている感性があるためか、とても読み応えがある。

 

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