『緋色の研究』 サー・アーサー・コナン・ドイル 創元推理文庫 620円+税
シャーロック・ホームズシリーズの劈頭である。(『失われた世界』についでドイルを読んでみたくなったのだ)
探偵コンサルタント・ホームズと負傷して送還された軍医ワトソンとの出会いから始まる。
病院の化学実験室での二人の初対面の章は、単なる"はじめに"ではなく重要な事件解決の種が撒かれている。
アルカリの大平原(アメリカ中西部)やモルモン教徒のソールトレイクへの大移民、モルモン教教義や掟などについてはかなりの偏見で書かれているが、こう書かねばストーリーは成立しないのか。
何故アメリカが出てくるかは、多分当時は大英帝国時代、世界中の中心または吹きだまりにロンドンはあったからだろう。
「緋色」とは、人生という無色の綛糸の中に殺人という緋色の糸が一筋まじっている、とホームズは語る。
『不思議な国のアリス』では少女のアリスがすることがなく飽き飽きして大あくびでのんびりしていて不思議な国を冒険する少女小説が大受けした時、ドイル少年は6歳だった。
『緋色の研究』は1887年に出版された。
翌1888年は切り裂きジャック事件で全英が震え上がった。
世も末の混乱相でいわば世紀末状態。
繁栄の時代が過ぎ、社会的に倦怠状況。戦争でも何でおもしろいものはないかといい第一次世界大戦に突入していった時代。無色の中の緋色の研究。
そんなときにシャーロック・ホームズは生まれたのだった。
作品のストーリー展開だけでなく、その社会的背景、時代の陰を探求するのも大好きな私だ。
そして、CATVのミステリーチャンネルでジェレミー・ブレッドのホームズは全て見ている。彼は適役だ。「マイフェア・レディ」でのフレディ役から大分大人になっているな、ふふふっ。バイセクシャルやディスレクシアのところもホームズにぴったりだ。
ホームズと言えば、大学時代の英語の試験で『まだらの紐』の一部訳が出されたのをいまでも思い出す。結果は言いますまい。
[前の日へのリンク]← | →[次の日へのリンク] |
Copyright © Etsuko Shinozaki 2003-2015 all rights reserved