『ベールキン物語』

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読書日記

2013年11月16日

『ベールキン物語』 プーシキン 岩波文庫 720円+税

『スペードの女王』と一緒に収められている。
たいへん凝った作で、ベールキンという作者の遺稿集に仕立てているが、プーシキンの作なのである。
短篇5作で成り立っている。
「その一発」
「吹雪」
「葬儀屋」
「駅長」
「百姓令嬢」
一遍一遍が実に素晴らしい。スリルがあったり懐疑的になったりユーモアたっぷりだったり。
ロシアの庶民の、ペーソスと哀しみや楽しみが綴られている。
プーシキンは小地主であり、反体制的と捉えられ、左遷されたり、不実な妻や友人がいて、結局決闘で死ぬのだが、その辺りの伏線が感じられる。
古きよき時代とは言えない、泥や馬糞の匂いの中、軍服、農民、そして乙女の清らかな白い衣装が漂っている、そんな風景が紙面に醸し出されている。 

 

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