『ローマ皇帝伝(上)』 スエトニウス 岩波文庫 620円
古代ローマの皇帝たちは、シーザーも含めて現代人には到底考えられない傍若無人、残虐非道な事を日常していたのだなと、つくづく恐ろしくなった。
著者スエトニウスは、西暦70年頃から130年頃まで生きた皇帝付きの秘書官だった。
だから当時の公文書は勿論のこと同時代の世評、風刺、落書きなどをもとに、皇帝の個人生活にまで及ぶ逸話が収められている。
カエサルも入れて、ドミティアヌスまで古代帝政ローマの元首12人が描かれている。
当然、多分、著者同時代の元首については書くことは憚れたであろう。ドミティアヌス帝は96年に暗殺されている。
映画などでよく見る古代ローマ皇帝の物語りは、こうした本種から作り上げられているのだ。
(上)では、カエサルからアウグストゥス、ティベリウスまで三代。
共和制できた古代ローマが、ユリウス・カエサル率いるいわば婚姻・養子縁組で成り立っているカエサル家という大所帯の主が代々元首つまり皇帝として君臨する帝政ローマ社会に変わった。
このカエサル家の統治は、クラウディウス帝、カリグラ帝、そしてネロ帝まで続く。この部分は(下)になる。
著者スエトニウスは人間関係中心に書いている。家柄、出生、姻戚、養子縁組、結婚・離縁、人柄、能力、陰謀、元老院との力関係、そして容姿、などなど。
"英雄色を好む"とはまさにその通り。代々絶大な好色。それも想像を絶するほどに。お三方しかり。
幼児から書かれていて、皆小さい時には猫を被っている。そして徐々に本性を発揮して、策略を講じていく。
カエサルは皆が知る通り。
カエサルは姉の孫オクタウィアヌスを養子とし、このオクタウィアヌスが初代皇帝アウグストゥスとなる。彼は賢者の感が強い。
そしてアウグストゥスが後添えにもらった夫人の子、いわば継子を養子に迎えて後任に仕立てたのがティベリウス。このティベリウスは幼児から冷酷で鈍重で、残忍だった。
とまぁ、ハラハラどきどき、読ませてくれる。
同じような名前が出てくるので、家系図と首っ引きで。それと、年表と。
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