『南総里見八犬伝』 平岩弓枝 中公文庫 781円+税
過日水田美術館で南総里見八犬伝の浮世絵を観て一度読んでみようと思った次第。
ともかく滝沢馬琴の原作は長編過ぎるし読めるはずもない。平岩弓枝が平易なダイジェスト版に綴ったものがこれであり、それでも登場人物を覚えるのも至難の業、何度もページを返りつつ読んだ。
時は足利六代将軍義教の頃、安房、上総、下総を平定して源氏の末流里見家が再興した際、八人の勇士が大活躍をしたとの設定。
この物語は呪いをかけられて始まる。
義教に謀反を起こし足利持氏側についた里見義実は、
家の再興を願い上総の城主の息女五十子を妻に迎え、美しい女児伏姫を設ける。
その姫の愛犬八房に、敵将の首を取ってきたら好きなものを与えると義実いうと、首を取ってきて伏姫の側を離れない。伏姫は観念して八房と共に霊峰に入りそこで身ごもる。八房の霊魂が宿ったのだ。自決を考え覚悟を認めていた折、許嫁金碗大輔が探索に来て八房を撃つ。伏姫は腹を刺し、そこから白気がひらめき出て伏姫が首にかけていた数珠を押し包むと虚空に高く舞い上げた。数珠は切れて八つの球が八方に散った。それにはそれぞれ、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の文字が浮かんでいた。
即ち、それらの球を身に着けたものが八犬士となる。里見家再興にそれと知らずにそれぞれ各地で各様に妖怪、悪漢、毒婦らと対戦、巡り巡って八人集まる、という筋である。伝奇長編小説が簡潔にまとめられていて面白く読める。
江戸の昔、テレビラジオの無い時代、読本がこうして流行ったのであろう。水田美術館で見た浮世絵にも原作者の滝沢馬琴が挿絵のように採用したという荒武者物があり印象深かった。
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