『寒雷』

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読書日記

2011年05月16日

『歌集 寒雷』 戸田佳子 歩道叢書・短歌新聞社 2000円

この歌集は昭和60年1月に発行された。
著者はわが高校時代のかなり親しかった友人。
が、高校卒業後40余年何故か殆どあっていなかった。
それが、数年前高校の同窓会で偶然会って以降、このところ年に2、3度会う。

数学教師を親たちの介護のため退職し、好きだった文学の道を勉強し、今や立派な歌人である。
彼女の他の歌集は既に頂いて読んだのだが、最近一番昔の歌集を頂いた。
それがこの『寒雷』
これは教師のかたわら短歌に興味を持ち始めて、良き指導者たちに恵まれ歌詠みをはじめた昭和49年から昭和58年までの10年間の作品を収めている。
大学を卒業後5年して、すでに彼女は歌の道を歩み始めていたのだ。

落ち着いたいい歌だ。
まだ若い頃。若さ故の苦悩、感受性の強くしなやかなそれでいて穏やかな、奥深い感性が伺える。

昭和49年の歌
  半日の勤を終へてわが憩ふ昼すぎの街なま暖かし
  かがまればわれみずからの髪匂い屈折したる感情のわく

……

己の若い頃の心持ちを思いだしながら、切なくしみじみと読んだ。
何度も読み直すことになりそうだ。

「寒雷」という歌集名は、尊敬し大学院で研究の対象にした歌人佐藤佐太郎がつけてくれたそう。

 

先の大地震の直前8日、作歌の取材に九十九里浜を案内した。
その折の歌を頂いた。
 「3月に案内していただいた九十九里の海の歌を12首作りました。そのうち4首を所属する結社誌に発表します。拙いものですがお礼の気持ちを籠めて披露します。

   昨日の雪融けて残りし水たまり幾つもすぎて海に出でくる
   満潮の光る渚は人音の絶えてひたすら砂に波寄る
   出でて来し九十九里の海荒れをりて底ごもりくる春潮の音
   亡き母の古里近き九十九里潮騒の音なにがなし親し

 

 

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