『午前零時のフーガ』 レジナルド・ヒル ハヤカワ書房ハヤカワポケットミステリー 1800円+税
英国中部ヨークシャー署の<ダルジール警視とパスコー主任警部>を対照的なキャラクターで登場させる人気のシリーズ22作目。
今回は、前々作で爆弾に倒れ長期療養から復帰して一週間経った日の、16時間のスピーディーな展開だ。
ただしこの日はダルジール警視の勘違いで、日曜日だったのだが…。
このシリーズは英国でドラマ化され、日本でもケーブルテレビのチャンネル・AXNミステリーで放送することがある。
わたしも必ず見ているが、原語では「ダルジール」とは発音せず「ディアル」と言っている。
が、はじめに日本語に翻訳されたのがダルジールのためか、それを今でもドラマの字幕でも使っている。
保守党下院議員で次の次の首相と目されている男が中心。と言おうか、彼の父親が巨額の寄付をして息子をそこまで登らせたので、その裏を探って事件が起きる。
男はオフ・ホワイト。黒人の父と白人の母を持つ。父はジャマイカからの移民。貧民窟の貸金業から巨万の富を築き上げた。
これが書かれた2009年は政権はまだ労働党にあった。
2010年5月の総選挙で保守党と自由党の連合政権キャメロン内閣が誕生。
果たして男はキャメロン首相の次を継げるのか。
男に、寝物語に「君たち労働党がカソリック改宗者(ブレア元首相)だのスコットランド長老派(ブラウン首相)だのと、派手な宗教人に事欠かないから…」といわせたり、父親はサッチャー政権の時代に自由市場経済というこの素晴らしい世界で嫌と言うほど金儲けのチャンスがあると見て取り、イースト・エンドから西を向き、金融街(シテイ)で人々が狂ったようにがつがつ食いまくるのを見て取り、やがて財界の巨頭となったとして、政治色も面白い。
ダルジールが自宅で出勤(勘違いなのだが)でどたばたしているとき、首都警察警視長から電話が入る…、というところからこの1日が始まる。
兎に角、おもしろい!!
が、今回は一気に読むということはなかなか出来なかった。
大震災の影響に怯えていてか、読書の集中力がなく、本屋で見つけて買って1ヶ月以上はパラパラと捲るだけだった。
ここへきて漸く一気に楽しむことが出来た。
他に数冊、まだ積ん読状態だ。
現実の日本時間の昨夕、英国では午前中、ウイリアム王子の結婚の挙式が華やかに繰り広げられた。
その裏の経済的現実として、英国は疲弊していて、キャメロン政権は11兆円の削減施策を実施している旨報道されていた。
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