『この国のかたち』 司馬遼太郎 文春文庫 520円+税
1993年、初版が出ている。
日本という国の有り様を平易に見つめている。
日本と宗教、統治のかたち、江戸期の多様性、明治維新の革命、日本の君主などなど、苗字と姓についてもおもしろかった。
著者の博識ぶりには驚かされる。すさまじい文化人だ。
これの筆をとった経緯が現在と因縁話のよう。熊本城の堀と石垣が見えるホテルで仕事中、依頼を受けて決めたという。そして、彼は1945年8月15日の敗戦の時、22歳の誕生日を迎えて8日目だった。栃木県佐野に駐屯していたそうだ。もし敵の日本本土上陸作戦が始まれば彼の部隊は最初の1時間の戦闘で全滅することは確かだった、死はまことに無差別で、死に良否も賢愚も美醜もないということを知った。その時の22歳の自分に手紙を書いているつもりで書いたと。
今日、熊本城は先の大地震で壊滅的被害にあった。
そして昨日は、現職米大統領としてはオバマ氏が初めて広島の地を踏んだ。マスコミは「謝罪」だの「核兵器根絶」だの「平和追求」だのと大騒ぎだ。原爆投下後71年目。戦争は仕掛けても受けてもいけない。謝罪は双方せねばなるまい。謝罪をしても始まらない。今後をいかに平和に導くかである。平和ノーベル賞受賞者オバマ氏の米大統領として軽々しく謝罪できない詫びのこころが、静かな黙祷の表情に読み取れたとしたい。
歴史は様々な形で連綿と引き継がれていく。
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