『また、桜の国で』

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読書日記

2017年04月08日

『また、桜の国で』 須賀しのぶ 祥伝社 1850円+税 

第二次世界大戦のさなか、ナチス・ドイツに蹂躙されるポーランドにいて、必死に戦う若者たち。戦いの惨たらしさは読んでいてはるかに想像を絶し、下水地下道に詰め込まれている夥しい死体の死臭がこちらの鼻をついてくる。
ドイツに生まれたユダヤ系ポーランド人(カメラマン)シベリアで生まれてアメリカ国籍を持つポーランド人(新聞記者)亡命白系ロシア人を父に持つどう見てもスラブ人にしか見えない日本人(外交官)らの、それぞれ人間としての正義感に燃える若者たちの命を削る戦いを描いている小説。ワルシャワの瓦礫の街にショパンの「革命のエチュード」が流れ、民族魂を鼓舞する。
発端は、第一次戦争後シベリアに抑留されていたユダヤ系ポーランド人政治犯家族の戦争孤児56名を、東京渋谷の日赤病院に隣接する仏教系育児院福田会が迎え入れていたことにある。
「日本のこころ」を、忘れ得ぬ第二の故郷と慕う若者たちの、民族的歴史的戦いに翻弄されていく運命との戦いは壮絶だ。
ポーランドは平原の国の意。歴史上何度も国を失っている

今日あたり、日本は桜が満開だ。一斉にわっと咲き一気に散る。満開も見事だが散り際も潔いのが桜だ。
移民問題は中東・欧米では古くからの問題である。おそらく、宗教問題と民族問題、これは歴史と共に始まっている。そこに戦いがついて回る。日本にもあるが中東・欧州とは比べものにならない。
トランプ氏のシリア空爆再開と、世界情勢はますますきな臭くなっている。ブッシュ元大統領の二の前か。
日本では、教育勅語の容認やら、「銃剣道」が中学保健体育の武道の選択肢に明記。「共謀罪」の創設も謀られている。

歴史は何度愚行を繰り返しても平和には程遠い。人間とはそうしたものか。
つくづく考えさせられる一冊である。

 

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