『西行』

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読書日記

2012年07月19日

『西行』 白洲正子 新潮文庫 476円+税

今年の春、とても桜が観たくて吉野山に行こうと考え、ならば確か白洲正子の『西行』の中に書かれているであろうと読み始めた著書だ。
結局吉野山には行けず、暇をみてはいろいろのカ所を拾い読みしていた。
このところの猛暑で外出を控え、風通しのよいところで涼みながら、また熱帯夜に寝そびれてしまったとき、読みふけった。
白洲正子の書き物は、実に惹き付ける。
西行の人となりを暖かく見守って書いている。
西行の事だけでなく、恋し続けた待賢門院とのこと、哀れんだ崇徳院との事、北面で同室だった平清盛のこと、源頼朝との面談などなど、平安末期の地獄絵さながらの世界をよそに、仏門に居ながら「数奇」を貫き通した一人の生き様を独特のタッチで描いている。
引用されている多くの和歌も、幼い頃記憶した小倉百人一首のうろ覚えのものも出てきて、それらの意味をいまさらに知ったりした。
西行の足跡を追って取材に歩いた各地の紀行文もいい。つい行ってみたくなる。
豊富な資料の読解力、豊かな感性、奥の深い的確な日本語の表現力などなど、白洲正子という人は興味がつきない。 

 

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