2004年09月07日
若尾文子主演「ウエストサイドワルツ」をルテアトル銀座で観た。
初日2日目で、まだ台詞も所作もこなれていなかったが、それなりに初々しくてよかった。
マチネを観られるなんて、スローライフならではである。
若尾文子に負けずにお洒落をしてと頑張ったが、銀座の通りのガラス窓に映る我が姿を見て、老けているのに愕然とした。歳相応なのだが、何時までも気持ちが若すぎても困る。歳相応の心持にならなくては。
そういえば、若尾さんだって70歳?
若尾さんのおっとりとした、少しもたもたする話し振りが気に入っている。聞いていて落ち着く。
"おっとり"で、私の気の持ち様を大きく変えてくれたことがある。亡母を病院で看病していた時のことだ。私は職場と病院と家を毎日往復していたので、気はせかせか、頑張らなければとせっぱ詰まって、神経は研ぎ澄まされていた。
隣りのベットに痴呆で風邪を引いたらしいかわいいおばあさんがきた。わたしと同じく毎日、見るからに優しげな女性が看病にやって来る。実の娘さんのようで50歳代かな。なんとおっとりとやさしい話し方、身のこなし方か! おばあさんはかなり痴呆がすすんでいるようで、娘さんが居ないときの荒れ方は酷かったが、それを知ってか知らずか、娘さんはいつもおっとりと接している。人の倍のスローな話方。「今日はどうでしたか。元気だった? 髪をとかしましょうね。」
わたしはそれを見て、開眼。180度こちらの心持ちを変えた。つまり、焦らず、ゆっくりと、穏やかにするようにした。そうしたら随分と楽になったものである。老いて病の床にある母を、大きく包み込んであげることができるようになった。
「ウエストサイドワルツ」は、「黄昏」の劇作家が書いたもの。一人暮らしの老後を書かせたらピカイチである。「ウエストサイドワルツ」は、ニューヨークのアパートに一人暮らすプライドの高い元女性ピアニストが、いかに他人と折り合いをつけて美しく老いていくかがテーマ。初演はキャサリン・ヘプバーンが演じたといえば、想像がつくいい芝居である。
女一人の老後は美しく、ユーモア精神に溢れてということか。もう決して焦ることはできない。お金はないよりはあった方がいい、か。
2004年09月05日「ウエストサイド・ワルツを観劇」← → 2004年09月09日「雨宿り」
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