エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

消費者基本法施行”(2004年07月11日)

  1968 年に施行された消費者保護基本法が、この度施行後初めての抜本改正で、名称も「保護」が取れ「消費者基本法」と改称されて、この 6 月 2 日から施行された。

 抜本改正の内容は、改称に示される通り消費者行政が消費者保護から消費者自立支援に変わったこと、さらに、遅ればせながら、「消費者の権利」が明記されたことである。

 消費者の権利としては、@安全が確保され、A商品および役務 ( サービス ) について自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、B必要な情報及び教育の機会が提供され、C意見が消費者行政に反映され、D被害が適切かつ迅速に救済されること、が挙げられている。

 自立した消費者像は以前から議論されてきた。権利の主張にはそれに伴う義務があることも言われてきた。しかし、今のこの時点で、企業不祥事が続出している時点での、「消費者自立」の問題は、よほどの覚悟が消費者にも行政にも、企業にも求められよう。自動車・トラックのリコール隠し、自動大型回転ドアの事故などは消費者の人命に係る事件に繋がり、食肉偽装、食品表示偽装など食の安全に繋がる事件も大きな社会問題として、そのつけは消費者の肩に降りかかってきた。が、消費者には事後の損害賠償訴訟しか取れる手立てはなく、事前のチェックができない。

 ということは、企業が上に掲げた消費者の権利を明確に理解し、それをまっとうできる強力な組織を、企業内にもっていなければならないことになる。例えばコンプライアンスなどと分からない言葉で言っていないで、はっきりと「法令遵守」と言わなければなるまい。法を守ることは、社会で生きていくうえでの最低限の約束事である。企業は社会的信頼の上でしか活動できない。業績向上のため内輪で些細な違反を黙認すると、それは企業不信に膨れ上がり、取り返しのつかない事態に陥ることが誰の目にも明らかになった。

 企業活動の基本で、消費者との共存を明確に実践することが今新たに求められている。

 

[イーピーレポートへ]

NewChibaProject