電力中央研究所の社会的研究評価会議で、「小型原子炉」の研究開発について説明を受けた。
小型原子炉というと、電力消費地の都心に設置する案などさまざまある。しかし、現状では国内はエネルギー供給が飽和状態にあるのではないかというのが筆者の率直な感想である。
この小型原子炉研究開発がはじまったのが、 1988 年、チェルノブイル事故がきっかけだった。当時は、情報化や全電化のライフスタイルを探る第一波の社会的うねりが始まった時。その後平成時代初めにかけて、長期大型景気の実現を見た。日米構造協議で 10 年間に 430 兆円の国内公共投資が求められたような時だ。事故が起きず、設置が容易で安全な原子炉の開発が求められたのも当然である。
今日では、有難いことに日本国内ではさまざまな形でエネルギーはゆきわたっている。そんな感を抱いたのは、この秋にエジプトとマレーシアに出かけて、外国の生活に触れたためである。特に、飲料水の不衛生なことを実感した。その国の人ですら、生水や水道水は沸かしてから飲むと言う。旅行者はミネラルウォーターしか飲むなとの注意以前の問題だと感じた。
電中研の説明は、チュニジア、モロッコあるいは他の開発途上国での飲料水、農業用水の淡水化計画で電力原として小型原子炉研究がすすんでいるとのこと。こうした地域では、電力よりは水が欲しいといわれている。泥水を飲んで、何十万人もの子供たちが死んでいくのが現状だ。
電中研の研究開発が、視野を広くもって、真に求められている国々の生活水準向上のために国際協力できることを期待している。
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