エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

イタリア・スローライフ紀行”(2003年12月10日)

    この秋、日本ヒーブ協議会で、「イタリアにスローライフの原点を学ぶ」という視察研修を企画し、わたしは団長として参加した。

 食品関係を中心に、元気いっぱいのビジネスウーマン13名の、収穫多いミッションを実施することができた。北イタリアのブラという小さな町から「スローフード運動」が起こって15年、現地ではどのようなものか、実際に見聞することにしたのだった。

 ところが日本で、スローフードに代表される“スロー”という言葉が目につきはじめた。安易にマーケティング用語として流行っている嫌いがあり、言葉だけが先行して中身が十分に伴っていないのでは。

 案の定、今年の夏から秋にかけて、観光客よろしく日本の団体が大勢押しかけ、ブラの町のスローフード国際協会をもみくちゃにしたようだった。

 われわれの出発直前になって、「みなさんのような真面目なグループには申し訳ないが、今後日本の団体とは会わないことにしたから」と、いったん受理してくれた訪問に断りが届いた。

 とかく日本の調査団は海外で評判はよくない。どたどたとやってきて、写真を無断で撮りまくり、ミーティグでは居眠りして、挨拶もそこそこに資料だけはたくさん欲しがると。

 多分、よりによってスローの現場で、日本のファストの行動が展開されたのであろう。

 われわれは、企画した行程だからブラの町に立ち寄り、個々にスローフード国際協会にも寄って、断った上で資料をもらったり、グッズを買ったり、お墨付きのスローフードを供している隣接したレストランを見たりした。係りの方たちは皆感じよく接してくれた。

 他の訪問先で、スローフードについていろいろ聞いてみた。が、なんと、殆どのイタリア人がそんなの知らないということなのである。あえてそんなこといわなくとも、もともとそういうライフスタイルであると。

 地元の農業を守り、小さな家族経営の仕事を大切に受け継ぎ、よく働き、家族を大切にし、ゆっくりと食事を楽しむ。ゆったりとして骨太な人々と接して、この国の底力を強く感じた。

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