『完璧な絵画』

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読書日記

2013年04月06日

『完璧な絵画』 レジナルド・ヒル ハヤカワミステリー 1400円+税

R・ヒルのダルジール警視シリーズもの
1994年著だ。実は今回読んだのは2度目。
これまで彼の著は真面目な警察ものとばかり思っていた。が、私立探偵ジョー・シックススミス・シリーズを読んでから、はたと気付いた、若しかしてR・ヒルという作家はかなりの洒落者?!
で、『完璧な絵画』を本棚から引っ張り出して細かく読んでみた。成る程、なるほと。以前はただストーリーに気をとられていて、面白味を半分もあじわっていなかったのだ。

中部ヨークシャーの辺鄙な片田舎エンスクームという絵に描いたような牧歌的村で起きる、昔からの領主(マナー)と村民達の奇妙で彼らだけに分かり合っている暖かさを、3日間の出来事で描いている。
各章の見出しをジェーン・オースティンの手紙から引用したりと、相変わらずの手の込みよう。
ジェーン・オースティンとの違いは、彼は社会や政治、経済、歴史などに辛辣でも不思議な包容力を作品の中に披瀝している。
領主の家督相続に女性は論外とされている点を突く制度批判、サッチャー主義という商業主義を批判、"世の中のろくでもないことの90%は政界に端を発している"とか、"マスコミにでる人間が事実を歪曲するのはいわば第二の天性"とか。
じっくりと細かに読んでみると、英国の社会風土が分かり、痛快だったり爆笑したりついほろりときたりで、彼の良さを再発見、早く次作が読みたくなった。

 

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