『灯台へ』

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読書日記

2016年08月04日

『灯台へ』 ヴァージニア・ウルフ 岩波文庫 960円+税 

ヴァージニア・ウルフはとても気になる作家だ。繊細な神経をもって生まれたのか、母親や身近の人々の死によって精神の病に冒され、死を強く願望するようになり、1941年に59歳で自殺した。その間夫の事業を手伝いながら、多くの執筆を続けた。
『灯台へ』は自伝のようだ。1927年出版。両親に似たラムジー夫妻、その8人の子供たち、著名な哲学者ラムジー氏を慕って学者や文化人たちが夫妻の島の別荘で過ごす一日。その後突然のラムジー夫人の死、成長した子供たちの死、別荘にはだれも来ず荒れていく。10年が経って、ラムジー氏と末の子供たち、旧知が久々に再来。著者とおぼしき画家も再来して、時の流れを振り返り、自分のヴィジョン(見方)を発見する。
強権的な父親、ヴィクトリア時代の典型な母親、この両親の神経のやりとり、夫人の子供への愛情など、日常の細かな事象を、実に丹念に叙情的に書いていく。叙情的というよりはむしろ心のひだを繊細に追う。
精神を病んでいる彼女のこころの微妙で強い闘いが伺い知れる。 灯台が何を象徴しているのか。
昔、『灯台へ』の2年前に出された『ダロウェイ夫人』を読んだときも同様な感想を持ち、惹かれたものだ。

 

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