『海をわたる手紙』 澤地久枝・ドウス昌代 岩波書店 1700円+税
日本とアメリカに住まうノンフィクション・ライター二人の手紙のやり取りである。
徹底的にノンフィクションであるから、徹底的な取材を実施している。テーマが埋もれた戦争の史実の掘り起こし、あるいは二世三世の時代に苛まれた苦悩などであるから、非公開であった国の資料や関わった人々の追跡を国境を越えて夥しく徹底的に追及していく。その信念と努力はすさまじいものを感じる。
その二人の、作品では現わしていない、余談といってはあまりにもったいない事実や感想を、そしてその言葉をとっかかりにさらに二人で回想しながら、個人的な事象も書き重ねている。
彼女らの作品は、徹底的に事実を追及して国の隠蔽をも暴いているので、作品の重みはただ事ではない。司馬遼太郎が「高い水準の事実性」と評している。
澤地さんの便りに記されている、『密約ー外務省機密漏洩事件』(1974年)を書くこととなった件は、私にも記憶がある。1972年5月15年沖縄本土復帰に絡み、時の日本政府は基地復元の400万ドルの米軍未払金を日本政府が肩代わりし、国内では完全に秘匿した佐藤栄作内閣の「密約」問題である。沖縄は基地ぐるみでアメリカに買われた。その秘密外交文書を持ち出した外務省事務官と毎日新聞政治部記者。国民の「知る権利」を守るために市民運動など活発化した。が、検察官の告発状は「ひそかに情を通じ」云々と、男と女の関係に問題をすり替えた。国民はこのすり替えに鈍く、まんまとはまってしまったのだった。
こうした恐ろしい隠蔽やすり替えは、今の為政でも知らず知らずに行われてやしまいか。
澤地さんの著『妻たちの二・二六事件』、ドウス昌代さんの『日本の陰謀ーハワイ・オアフ島大ストライキの光と影』、『イサム・ノグチー宿命の越境者』は読んで大変感動を覚えたものである。もっともっと読もう。
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