『日本奥地紀行』

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読書日記

2014年02月20日

『日本奥地紀行』 イザベラ・バード 平凡社 1500円+税

たいへん興味深く読んだ。
原題は、Unbeaten Tracks in Japan 。日本の未踏の道々。
著者はイギリス女性。1831年生まれ。生まれながらに病弱、脊椎の病
幼くして乗馬を覚え、医師から養生のため、転地、航海を薦められ、長期海外旅行に出るようになり、主に未開の世界各地を単独で周る。
日本には、1878年明治11年、イザベラ47歳の時に初めて訪れ春から冬の約半年滞在。
その時の外国人女性初踏破の東北・北海道の旅を纏めたものが本著作。
その後1894年から96年までに5回日本を訪れている。 

本著は、英国に居る妹に旅先から送った手紙を纏めた。
実に興味深い。丹念に綴られている。
明治11年と言えば、明治10年に最後の内乱「西南戦争」があり、新政府の施策は定まらす、田舎の農村にまでは遠く届かず、水飲み百姓といわれて食うや食わずの百姓一揆が多発していた時代。
そんな中を、道無き道を18歳の通訳兼使用人兼ボディーカード兼という日本人青年を伴に外国人女性が、全く調教されていない駄馬か人力車を宿場ごとに雇いつつ、障子一枚の隔てで何百個という興味津々の眼に夜通し見つめられながらの宿の仮寝で、北海道まで行き、アイヌの村に駐まり、具に取材観察している。
(中学時代、国語の教科書で金田一京助だったと思うが、やはりアイヌ語を現地に調査研究した「片言隻語」という文章を読んだ記憶が甦った)

多く未開人、未開地、野蛮人という表現が使われている。
英国夫人の目には当時の日本奥地はそう映ったのだ。
東北縦断の旅は、梅雨の季節、西洋人のまだ通ったことのない道を選びつつ進む。まさに探検家である。落馬し濡れ鼠で進む。
食糧は自前で出来るだけ持っていくが、現地で調達できるのは、小量の臭い米(多分古古米)やキュウリ、よくてまれに玉子。
日本人は殆ど裸。皮膚病に罹っている。痩せて、胸がへこんでいる。殆ど風呂にはいらないのだろうと。

北海道に行って、日本に支配されているアイヌ社会の観察は圧巻。
数百人のアイヌ集落に一人二人の日本人の役人が監視している。アイヌ人は毛深く胸は大きい。微笑む顔がヨーロッパ系であると、興味深い観察だ。滅び行く民の静けさを感じ取っている。
木削りの神以外は祀っていなく宗教心はない。が、義経をアイヌの救済者・保護者として崇め讃えて、義経神社(祠のようなもの)を発見。北海道から中国に渡ったとされる義経伝説は、こうしたところから生まれたのか。
(私は30年ほど前、仕事で北海道に行ったとき、アイヌの居留地を見た。その時、小さな住居、側にある小さな沼や生えている細い木々を見て、アイヌ文化の穏やかさ、ひ弱さ、寂しさを身にしみて感じた記憶が甦ってきた)

今日では想像すら出来ない、日本の歴史の断面を垣間見せられ、深く深く考えさせられた。
蝦夷討伐、征夷大将軍、アイヌ民族保護、北方領土問題、東北・北海道開発、新幹線普及などなど、歴史はずーっと古く深く続いているのである。歴史から学ぶ事は多い。

 

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